理学院地球惑星科学系3年の大石一路です。今回は最近の勉強の話ということで、3年漕手としてではなく、学部生として自己紹介をしてみました。ボート部では勉強の話をする機会はめったにないので、今回は真面目に今やっている研究について紹介したいと思います。少し専門的な内容になりますが、なるべく分かりやすく説明するように努力します。
研究概要
私は現在、地震について研究を行っている研究室に所属しています。具体的には、首都圏稠密観測網(MeSO-net)の観測波形データを用い、機械学習ツールを活用して地震カタログを作成しています。そして、その地震カタログを基に地震波トモグラフィーを行い、首都圏直下の詳細な地殻構造の不均質を明らかにすることを目指しています。この研究の究極的な目標としては首都直下地震がどこで発生する可能性が高いのかということを明らかにするというところにあります。
以下では各用語に関する説明を加えています
地震カタログとは
地震カタログとは、地震の発生時刻、震源位置、マグニチュードなどの情報を集めたデータベースのことで、地震カタログを作成するためには、観測データの詳細な解析が必要となります。
MeSO-netとは
MeSO-net(Metropolitan Seismic Observation network)は、首都圏に集中して設置された地震観測点のネットワークです。この観測網の特徴として、観測点間の距離が2〜5km程度と非常に密であることが挙げられます。これに対し、通常の研究で使用されるHi-net(高感度地震観測網)の観測点間隔は約20kmなので、MeSO-netを使うことでより高精度な地震解析が可能です。
ただし、MeSO-netの観測点では200Hzのサンプリングレートを持つ加速度計を使用しているため、通常の解析形式に合わせるために次のような処理が必要です。
· - ダウンサンプリング:200Hzデータを適切なレートに変換する。
- 速度波形への変換:加速度データを積分して速度波形に直す。
これらの作業はデータ解析の難しさの一因となっています。


機械学習ツールの活用
私の研究では、地震カタログを作成するためにPhaseNetとGaMMAという機械学習ツールを使用しています。
・PhaseNet
- 用途:大量の地震波形データに対して、P波とS波の到達時刻を自動的に検出。
- 従来方法との比較:気象庁の地震カタログでは到達時刻を人の目で読み取っているが、大量のデータを手作業で処理するには膨大な時間がかかるため、PhaseNetを用いることでこれを大幅に効率化できる。
- トレーニングデータ:オリジナルのPhaseNetはカリフォルニアの地震データでトレーニングされているが、最近では日本のデータで学習させたモデルも公開されており、その使用を検討中。

PhaseNetによる出力の一例
・GaMMA
- 用途:PhaseNetで検出されたP波・S波の到達時刻と地震波速度構造を入力とし、個々の地震イベントを自動的にクラスタリングして震源を特定。
- 特徴:教師データを必要としない統計学的手法を採用しており、新たなデータにも柔軟に対応できる。また、PhaseNetとの相性が良く、PhaseNetと併用することを想定したコードがネット上に落ちているため非常に扱いやすい。
GaMMA出力の一例
トモグラフィーとは
地震波トモグラフィーは、地震波の伝播速度や震源データを用いて地下構造を三次元的に解析する手法で、この手法により、地下の岩盤の硬さや不均質構造を詳細に把握することができる。これを用いて作成した地震カタログを基に首都圏直下の地下構造を明らかにすることを目指す。

Hasegawa et. al.,(2012)より参照 首都直下の地震波トモグラフィーの一例
これの詳しいバージョン作りたい
まとめ
以上が、私の最近の研究内容についての概要です。研究では、地震観測データの解析や機械学習ツールの活用が中心であり、これらを駆使して首都圏直下の地下構造をより詳細に解明しようとしています。内容がやや専門的になりましたが、地震学や機械学習の可能性について少しでも興味を持っていただけたら幸いです。また、機械学習の手法などについて詳しい方がいらっしゃいましたらぜひ教えていただきたいのでよろしくお願いします。

